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聖ミカエルの

うことでエレネ人


「噂によると、シミュラという街の司教がエレネ人教会の次の長になりそうだとか」
「それはいささか誇張が過ぎます」スパーホークが答えた。「アニアス司教の野望を不愉快に思っている者も、教会にはたくさんいます。シミュラの司教の野望を阻《はば》むのも、われわれの目的の一つなのです」
「ではそのためにも祈りましょう。アニアスがカレロスの玉座につけば、スティリクム人にとっては災厄です」
「誰にとっても災厄だ」アラスが低くつぶやいた。
「スティリクム人にとっては生きるか死ぬかの問題です。シミュラのアニアスがわれわれの民をどう思っているかは、広く知られていますから。エレネ教会の権威はわれわれに対する一般信徒の憎しみを抑えてきましたが、玉座にアニアスが座ることになれば、そんな制限は撤廃してしまうでしょう。そうなればスティリクムの民はおしまいです」
「どんなことをしても、あの男が総大司教になることだけは阻止するつもりです」スパーホークはきっぱりと言い切った。
 老スティリクム人は一礼した。「スティリクムの若き神々が皆さんを守ってくださいますよう」そう言って、さらにセフレーニアとフルートにも頭を下げる。
「では出発しよう。われわれがいると村の人たちが戻ってこられない」スパーホークが言った。
 一行は村を出て、森に戻った。
「戦場を掘り返してるのはゼモック人だったわけか。イオシアじゅうに入りこんでるんだな」とティニアン。
「すべてオサの計画の一部だということは、何世代も前から知られていました」とセフレーニア。「たいていのエレネ人には、西のスティリクム人とゼモック人の区別がつきません。オサは西のスティリクム人とエレネ人が和解したり、連携したりすることを望みませんでした。だから狙いすました残虐行為を何度か行なの大衆の怒りに火を点《つ》け、スティリクム人は残酷だという噂を広めたのです。何世紀にもわたる対立と虐殺の原因は、すべてここにあるのです」
「二つの民が和解すると、どうしてオサが困るんです」カルテンはわけがわからないようだった。「大陸の西方には脅威になるほどの数のスティリクム人はいないし、どうせ鋼鉄の武器には触れないんだから、また戦争が起きたとしても役には立たないでしょうに」
「スティリクム人は鋼鉄の武器で戦うのではなく、魔法で戦うのですよ。スティリクムの魔術師は、聖騎士よりもずっとたくさんの魔法を知っています」
「ゼモック人がランデラ湖の周辺にいるというのはいい前兆だ」ティニアンが言った。
「どうして」とカルテン。
「連中がまだそこらを掘り返しつづけてるってことは、ベーリオンが発見されてない証拠だ。おれたちが正しい場所に向かってるって証拠でもある」
「それはどうかな」アラスが反論した。「五百年のあいだベーリオンを探しつづけてもまだ見つからないということは、ランデラ湖という場所が間違っているのかもしれない」
「どうしてゼモック人はおれたちみたいに死霊魔術を試さなかったんだ」カルテンが尋ねる。
「サレシア人の魂はゼモック人には何も語らない」アラスが答えた。「おれには話してくれるだろうが、ほかの者はだめだ」
「おまえがいてくれてよかったよ」ティニアンが言う。「さんざん苦労して幽霊を起こしておいて、何もしゃべってくれないんじゃたまらないからな」
「死霊とはおれが話す」
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