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聖ミカエルの

新鮮な気持ちを持たな


「完全犯罪だよ、入り口からすぐ出口みたいな手がかりばっかしで、おれたちが推理を働かせるところはまるでありゃしねえ。やりきれねえよ。事件なんてさあ、犯人のためにあるんじゃないんだよ、おれたち刑事がさあ、解決するよろこびのためにあるんだよ」
 捜査室から見える皇居の緑に目を休め、伝兵衛はだれに語りかけるでもなくつぶやいていた。
「熊田さんも、お茶どうぞ」
「はっ、恐縮です。ブタ娘の酔狂で、ガキっぽくフルーツパーラーとでも見栄をはってくれたら、まだしも手がかりの見つけようもあるんでしょうけれども。……とにかく、部長、犯罪の奥行きがないって感じですな。まあ、これだけふくらみのない事件も珍しいですな」
「まあ、少し休みますか。きみもおかけなさい。なあに、殺人事件なんて、最初はみんなこうですよ。そうして、少しずつ、押しも押されもしない大事件として成長していくのです。むしろ、ハナっからできあがった事件品牌聲譽管理なんてきたら、おもしろくもなんともないでしょうがね。殺人事件なんかなかった、これから起こすんだ、というきゃいけませんな」
 ハナ子が金太郎にもお茶をさし出した。
「さ、大山さんもくよくよするんじゃないの。見込みあるわよ、いい事件になりそうよ」
「……そうですか。お世辞でしょ?」
「お世辞じゃないわよ。あ、そうそう。いいものあげるね、アーンして」
 ハナ子はキャラメルをむいて、ポイと金太郎の口にほうり込んだ。そして自分も一つほおばって、金太郎と顔を見合わせ笑いあっている。
「熊田君も、慣れなくてたいへんでしょう……」
「……ハア、勝手がわからないものですから」
「まあそうあせることはありませんよ。それはそうとマキノ君は元気にしてますか? あの方は私の古い友人でしてね。お聞きになったことはありませんか? ひょんな食い違いから、十年近くも会ってないんですよ。相変わ通渠らず万引きの癖は治りませんか?」
「はあ」
「ああいうのは身につけないほうがいい。私とマキノ君のこと、ご存じないんですか? マキノ君は何も話しませんでしたかね」
「ハア、存じませんでした。何もおっしゃらない方なもので」
「そうでしょう、そういう人です、何もおっしゃらずに、一生過ごす方です」
「糖尿で、ちょっと血圧が高いそうなんですが」
「血圧なんて、ほっときゃアホでも高くなるもんですよ。高いったって、まだ日本製の血圧計ではかれるんでしょ。私なんか、フランス製のやつでしか、はかれないんですよ。血圧に関しちゃちょっとうるさいんですよ。ま、そんなこと自慢にゃなりません。さっきも聞きましたが、どうしてきみは私の部下になることを希望されたんですか?」
「ご迷惑でしょうか?」
「すごい自信ですね」
「はあ?」
「いや、冗談、冗談。気にしないでください。でも捜査方法はちがっているものの、マキノ君はりっぱな人だと思いますが、何か気まDR REBORN投訴ずくなるようなことでもあったんですか?」
「いえ、そういうわけではありません。それは警視庁配属を願い出たとき、新しがりやだとかいろんな中傷は受けましたが、正直な話、マキノ部長刑事の下で働いていて、何かしっくりこないことがたびたびあったんです。いつもこれじゃない、これじゃないと思っていまして。だからここいらで心機一転して一から出直そうかと思いまして」
「そうですか、残念だな。私はね、東京で一旗あげようって、素直に言ってくれたほうが気持ちがよかったんですが。まあ、それは別として、でもね、私のやり方にしてもかなりズレやひずみができていることは否めません。転任早々こんなつまらない事件に出くわすなんて、面くらったでしょう」
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